ナノマグネティックスとスピントロニクス
 ~金属ナノ材料・デバイス開発とその応用および磁気計測~

未来材料・システム研究所

      教授  加藤剛志

様々な薄膜形成とその評価

 スパッタリング,真空蒸着および分子線エピタキシーによる金属,酸化物,窒化物などの薄膜形成の支援をすることができます.特に複数のスパッタソースを備えた多元スパッタ装置を保有しているため,真空を破ることなく多種類の材料を積層した多層構造膜を成膜することができます.例えば,薄膜の基板との密着性を向上させるためのCr/Au二層膜や金属膜/SiN酸化防止膜の形成などを容易に行うことができます.また,スピンデバイスのための多層構造膜として,Ta/FeCo/MnIr/CoFeB/Al2O3/FeCoB/Taなど5種類以上の材料をナノメートルの精度で積層することができます.なお,成膜した薄膜について,段差膜厚計,薄膜X線回折装置,走査型電子顕微鏡,原子間力顕微鏡などを用いてその表面構造や結晶構造などを評価することができます.

複数のスパッタソースを備えた高周波マグネトロンスパッタリング装置の概略図
複数のスパッタソースを備えた
高周波マグネトロンスパッタリング装置の概略図
超高真空仕様の8元マグネトロンスパッタリング装置
超高真空仕様の8元マグネトロンスパッタリング装置

磁性材料の開発とその応用,及び磁気測定

 NiFe, CoPt, FePtなど合金系の磁性薄膜,磁性ガーネットなどの酸化物磁性薄膜等,さまざまな磁性薄膜材料の成膜プロセスに関して多様なノウハウを有しており,これら磁性薄膜の開発を支援することができます.また,磁気特性の評価装置として,振動試料型磁力計,交番磁界勾配型磁力計,トルク磁力計,走査型磁気力顕微鏡,磁気光学スベクトルメータ,磁気光学Kerr顕微鏡を保有しており,ヒステリシス曲線や磁気異方性の測定,ナノメートルレベルの磁区観察など,様々な角度から磁性の評価を行うことができます.

高感度で磁性薄膜のヒステリシス曲線を測定できる交番磁界勾配型磁力計
高感度で磁性薄膜の ヒステリシス曲線を測定できる
交番磁界勾配型磁力計
磁気力顕微鏡で観察したCo/Pt多層膜の磁区像
磁気力顕微鏡で観察した
Co/Pt多層膜の磁区像

ナノマグネティックスとスピンエレクトロニクス

 近年,巨大磁気抵抗効果(GMR)やスピントンネル効果など,磁性薄膜の電気抵抗が磁界の印加により大きく変化する現象が注目されており,これら磁気抵抗素子のハードディスクの読み出しヘッド,固体磁気メモリ,磁気センサなどへの応用研究が精力的に進められています.下図に示す磁気トンネル接合を作製するために,8元スパッタ装置,電子ビーム描画装置,マスクアライナ,SIMS付きECRエッチング装置などを利用することができます.また,磁気抵抗素子を利用した磁気センサなど,磁性デバイスの作製とその応用についても支援することが可能です.

スピントンネル素子の断面TEM像
スピントンネル素子の断面TEM像
GMR素子を利用したマイクロ磁気センサの試作例GMR素子を利用した
マイクロ磁気センサの試作例

名古屋大学 未来材料・システム研究所 加藤 剛志
Tel. 052-789-3304, Fax. 052-789-3153
E-mail : kato.takeshi.i6@f.mail.nagoya-u.ac.jp